どのような治療?
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)に対する手術です。
鼻の中(鼻腔)からつながった空洞(副鼻腔)の炎症が長引いた状態が、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)です。おもにウイルスや細菌、カビの感染が原因となりますが、虫歯や歯周病によっておこるものもあります。気管支喘息と関連し、何度も繰り返すものもあります。
内服薬等の治療を継続してもよくならない場合、大きなポリープ(鼻茸)がある場合などに手術適応となります。
近年では内視鏡の導入により、短時間で精度の高い手術を行うことができ、切除する箇所も最小限に、術後の出血・痛みも軽減されています。
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以前の手術は…
内視鏡下副鼻腔手術が確立される前は、「経上顎的副鼻腔手術」という手術が行われていました。これは上顎の歯肉(上唇の裏側)に切開を加え、骨の一部の取り除いた上で、副鼻腔の粘膜を除去します。
当時は、病的な粘膜だけでなく健康な粘膜までできる限り除去するのが正しいと考えられており、そのため術後に副鼻腔の機能障害、術後の嚢胞形成などが生じていました。また、術後は創部の腫れ、出血、痛みが強く、長期間入院する必要もありました。
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ESSは…
従来の副鼻腔炎(蓄膿症)手術に対して、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)の場合は、内視鏡を用いて鼻の穴からアプローチします。
従来の「経上顎的副鼻腔手術」と比べると、以下のようなメリットが挙げられます。
● 短期の入院あるいは外来(日帰り)での手術が可能
● 術後の痛み、腫れ、出血が少ない。
● 後遺症のリスクが低い
内視鏡科副鼻腔手術は、執刀医による確かな技術が求められますが、患者様の身体にも生活にも低侵襲(ダメージが少ない)な手術と言えます。
低侵襲になることで術後の回復も早く、短期入院や日帰り手術も可能になります。
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当院では、主に鼻腔内にポリープがある方、頬の裏側の空洞(上顎洞)に炎症のある方を適応としています。副鼻腔は他にも額の裏側や両眼の間、奥のほうにもあります。それぞれ脳や眼と近いところにあるため、手術に際しては注意が必要です。そこに炎症が強い場合には全身麻酔をおすすめし、病院に紹介とさせていただいております。
手術の対象
- ● 慢性副鼻腔炎に対する内服薬や点鼻薬等の治療で、改善がみられない場合
- ● 大きなポリープ(鼻茸)があり、鼻づまりが強い場合
手術法
- ❶ 鼻の穴から内視鏡を挿入し、手術の視野を確保
- ❷ 副鼻腔を隔てている隔壁を除去したり、狭い部分を広げる
- ❸ マイクロデブリッダーという機器で副鼻腔内の病的な粘膜やポリープを切除・吸引
- ❹ 副鼻腔が再び閉塞してしまわないようにスポンジや綿を詰めて終了
合併症
一般的な出血や創部の感染、痛みなどに加えて、以下の可能性があります。
- ● 目の障害:視力低下、眼球運動障害による複視(物がダブってみえる)
- ● 脳の障害:髄液漏、髄膜炎、脳炎
- 当院では、眼や脳と近い副鼻腔の操作は行いませんので、上記の可能性はほぼありませんが、十分に注意して手術を実施します。
術後の見通し・注意点
- ● 術後当日は飲酒・入浴は禁止です。
- ● 術後3日間、両鼻内にスポンジガーゼを留置するので、その間は口呼吸になります。4日目にガーゼを抜くと、鼻呼吸が可能になります。
- ● 術後の仕事は、デスクワークであれば翌日から可能です。術後2週間程度は、汗をかくような肉体労働や運動を避けてください。
費用
術型によって異なりますが、手術自体は3割負担で約10,000~40,000円(片側)です。
その他、処方箋代、診察代などがかかります。
副鼻腔手術を単独で実施する場合以外に、鼻中隔が湾曲していたり、鼻づまりが強い場合には、鼻中隔矯正術や下鼻甲介手術を同時に行うこともあります。
副鼻腔炎の原因はさまざまで、複数以上の原因が絡み合って症状を悪化させていることもあります。
一度の手術で複数の原因を除去できる、また他の鼻の病気・症状のリスクを軽減できるという点では、手術を組み合わせることは選択肢の一つとして有効です。